歯石が付着したまま放置されると歯周病の原因になります。
最近では人で、歯周病が心臓病等の原因になると言われていますが、犬・猫でも同様です。
歯周病は口腔内の問題だけでなく、呼吸器疾患や全身の臓器に影響する可能性があります。
歯周病の原因や、歯石除去について紹介します。
歯周病による症状
口臭が強くなる、鼻汁が出る、眼の下が腫れる、歯肉の発赤などがあります。
治療
歯周病予防のために一番重要なのは、日頃のケアになります。
歯磨きやサプリメント、デンタルガムを組み合わせてケアしていくのが効果的です。
しかし歯石が付着してしまった状況だと、歯磨き等では歯石を落とすのは困難です。
一度麻酔下で歯石除去をしっかり行い、その後日々口腔内のケアを続けていく必要があります。
方法としては、人の歯医者と同様に、スケーラーという機器により歯石の除去を行います。
歯周ポケットは、スケーラーの届かない部位になりますのでキュレットにより歯石の除去を行います。
最後に研磨により仕上げを行います。
スケーリング
ルートプレーニング
ポリッシング(研磨)
治療前
治療後
注意
近年、麻酔をかけずに行う無麻酔スケーリングを行う一部の動物病院やサロンがあります。
しかし、動物の場合無麻酔だと適切な処置を行うのは困難であり、場合によっては肺炎等になるリスクもあります。
無麻酔の欠点やリスクとしては、歯の裏や歯周ポケットの歯石除去が困難、スケーラーから出る水の誤嚥による肺炎、処置時の痛みや恐怖から今後歯のケアをさせてくれなくなる可能性など多々あります。
歯のケアについて気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
歯周病(重度)・根尖周囲膿瘍
症状
歯周病が進行すると歯槽骨の吸収が見られ、痛みが生じたり、全身性の疾患の原因にもなります。
破折した(歯が折れた)場合、そこから感染が起きて根尖周囲膿瘍になることもあります。
根尖周囲膿瘍は、歯の根元に膿が貯留し、眼の下や頬が急に腫れることで気付かれます。
犬・猫ともに多々見られます。
診断
当院は歯科レントゲンを導入しておりますので、歯科レントゲンにより歯槽骨の吸収や歯周病の進行度を確認します。
根尖周囲膿瘍の際にはその原因となっている歯を慎重に見極めます。
根尖周囲膿瘍により、右頬が重度に腫れています。
根尖周囲膿瘍
根尖周囲膿瘍の原因となっている歯を見極めて、抜歯します。
レントゲン
正常歯
歯槽骨の吸収が認められます。
歯槽骨吸収のある歯
治療
歯周病の炎症や口臭、根尖膿瘍の膿の貯留は、抗生剤の内服で一時的には改善します。
しかし基本的には抗生剤の休薬で再発するので、重度の歯周病の歯や、根尖周囲膿瘍は抜歯が必要となります。
抜歯の多い例としては、乳歯、歯周病の進行した歯、破折した歯があります。
エレベーターやマイクロエンジン、抜歯鉗子により抜歯を行います。
犬歯の抜歯後に注意を要するのは、フラップを行わないと抜歯した犬歯の穴と鼻が繋がった状態である口鼻瘻になります。
口鼻瘻を防ぐために、アイリス剪刀や骨膜剥離子で慎重にフラップを作成し、抜歯した穴を縫合します。
フラップ処置後
重度歯周病の抜歯後の歯
口蓋裂
口蓋裂とは、上顎の硬口蓋や軟口蓋、口唇に穴が開いていたり、裂けている状態です。
原因
先天性に唇から喉の奥にかけての一部が癒合しないことにより発生します。
後天性は、落下などの外傷で裂けることにより発生します。
犬でまれに先天性に見られ、猫では交通事故や落下後に見られることが多いです。
症状
口蓋裂の穴の大きさにより症状の重症度が異なります。
重症の場合は、誤嚥性肺炎(誤嚥による肺炎)が起きる可能性があります。先天性の場合は成長不良も見られます。
診断
口腔内の観察により発見できます。
口蓋裂が喉の奥の軟口蓋にまで及んでることもあるので、口蓋裂の大きさや部位を適切に把握します。
治療
手術により口蓋裂の穴を塞ぐ必要があります。
手術手技は当院では、双茎弁スライド法により行います。
口蓋裂が完治すれば正常な子と同じように生活できます。
硬口蓋の口蓋裂
どちらも同じ症例です。硬口蓋だけでなく、軟口蓋まで裂けていました。
軟口蓋の口蓋裂
硬口蓋を縫合し整復しました。傷は徐々に肉芽が増生し治癒します。
手術後