消化器外科
一部術中・術後の写真がありますので苦手な方はご遠慮ください。
異物誤食
原因
おもちゃや石、ひもなど様々なものを誤食する可能性があります。
拾い食いしてしまう子や、好奇心旺盛な若い子は要注意です。
症状
異物が腸に閉塞すると頻回の嘔吐や食欲の低下が見られます。
紐状異物の際には、腸穿孔により急変することもあります。
猫はひもが好きな子が多いので注意が必要です。
診断
エコー検査では、異物の確認や閉塞の有無を確認します。
当院では最新機種の超音波診断装置がありますので、消化管の観察に優れています。
レントゲン検査では、レントゲン不透過性の異物であれば確認できます。
バリウム検査を行うこともあります。
食道内に異物が閉塞しています。造影剤による造影検査時に撮影。
レントゲン(食道内異物)
内視鏡検査(食道内異物)
治療
当院は内視鏡を導入しておりますので、胃内にある中程度の大きさの異物であれば摘出できます。
腸内に閉塞している際には、開腹下での異物摘出が必要です。
基本的には胃や腸の切開により摘出ができます。
しかし紐状異物や、長期間異物が閉塞しており腸の穿孔や壊死が起きている場合には、腸の切除が必要になることもあります。
気になる症状が続くときは早めの受診をお勧めします。
異物摘出後(紐状異物)
異物摘出後(タオル)
十二指腸を穿孔していたので緊急で手術しました。
異物摘出後(爪楊枝)
空腸内の異物を摘出し縫合。縫合後にリークチェック(漏れの確認)を実施中。
異物を摘出し縫合後
胆嚢摘出
胆嚢は、肝臓で生成した胆汁を一時的に貯蔵する役割をしています。
しかし、胆嚢粘液嚢腫などの異常を呈した場合は摘出が必要になります。
犬で胆嚢疾患は見られることが多いです。
胆嚢。胆嚢内に胆石が生成されることもあります。胆嚢内がゼリー状に固まった状態を胆嚢粘液嚢腫と言います。
総胆管。総胆管を通じて胆汁を腸に流します。総胆管内に石や粘液が閉塞すると黄疸が生じます。
肝胆道系
胆嚢疾患による症状
元気・食欲の低下や嘔吐が見られます。
全身や尿が黄色っぽくなることもあります。
診断
エコー検査では、胆嚢内の異常の検出に優れています。
血液検査では、肝酵素の上昇が認められます。
胆嚢炎が疑われる場合は、エコー下で胆嚢穿刺をし細菌培養検査をすることもあります。
エコー(胆嚢粘液嚢腫)
桿菌が多数認められ、胆嚢炎が疑われました。
胆嚢穿刺後鏡検
治療
胆嚢摘出の適応としては、胆嚢粘液嚢腫や胆石の閉塞した症例、抗生剤でコントロールの難しい胆嚢炎の場合は考慮します。
手術手技は当院では、症例に応じて漿膜内剥離、漿膜外剥離を選択します。
胆嚢摘出後は総胆管洗浄により、十二指腸への開通も確認します。
胆嚢疾患は状態の悪い症例が多く、リスクを少しでも軽減するために、術前から術中、術後の周術期管理を慎重に行います。
本来胆汁は液状であるが、胆嚢粘液嚢腫になると固形化します。
胆嚢摘出後(胆嚢粘液嚢腫)
胆嚢摘出後(胆石)
胃拡張捻転
原因
胃が捻じれて閉塞し、胃内に空気が多量に貯留します。
大型犬で食後に運動をすると発生しやすいと言われています。
ダックスフンドでも多々見られるので注意が必要です。
症状
急に腹部が腫れてきて、吐きたくても吐けないような症状が出ます。
循環状態の悪化のため虚脱することもあります。
診断
レントゲン検査で、胃拡張や捻転を確認します。
胃捻転による重度胃拡張。捻転によるダブルバブルサインも認められます。
レントゲン
胃の捻じれにより発生します。
治療
命に関わる緊急疾患なので迅速に診断、手術を実施する必要があります。
手術前に胃内の空気を抜去し減圧しつつ、循環確保のため急速輸液を行います。
手術は、まず早急に胃の捻転を元に戻し解除します。
その後、再発防止のため胃を腹壁に固定します。
術後急変することもあるので慎重な術後管理が必要です。
捻転を整復後、胃を腹壁に固定します。胃固定を行わないと術後再発の原因となります。
胃固定実施後