泌尿器・生殖器外科
泌尿器・生殖器外科
一部術中・術後の写真がありますので苦手な方はご遠慮ください。
膀胱結石
膀胱内に結石が発生している状況です。
原因
食事や体質、併発している疾患が原因で発生します。
症状
血尿、頻尿などの症状が認められることが多いです。
尿道に結石が閉塞すると尿が出せなくなります。
排尿ポーズを何度もしても、尿がほとんど出ていない場合は急変することもあるので注意が必要です。
診断
犬・猫ともに泌尿器症状の原因で多々見られるので、エコー検査で結石の有無を検査することが重要です。
エコー検査では、腎臓内や尿管に閉塞がないかも確認をします。
レントゲン検査でも、レントゲン不透過性の結石であれば確認できます。
尿検査では、結晶を観察し結石の種類を推定します。
エコー
レントゲン
尿検査(ストラバイト)
尿検査(シュウ酸カルシウム)
治療
結石の種類により治療方針が大きく変わります。
結石で多く認められるのが、ストラバイトやシュウ酸カルシウムです。
ストラバイトであれば、療法食により溶解できる可能性があります。
シュウ酸カルシウムは、溶解させるのが困難なので手術により摘出し、術後療法食を続けて再発予防をします。
尿酸アンモニウムと言われる結石は、犬種や疾患により発生することが多いので、基礎疾患の治療が重要です。
摘出した結石(ストラバイト)
摘出した結石(シュウ酸カルシウム)
尿管結石
腎臓から膀胱をつなぐ尿管内に結石が閉塞した状態。
腎臓で作った尿を膀胱に送れず、急性腎不全に進行し命に関わる病気です。
尿管に結石が閉塞することで、腎臓で生成した尿が膀胱に流れなくなり、腎臓に負荷がかかります。
原因
腎臓内に結石が生成され、それが尿管内に流れてしまい閉塞することで起きます。
最近では猫での発生が多く問題となっております。
若くても起きるので要注意です。
症状
急に元気や食欲が無くなったり、嘔吐をすることもあります。
片側のみの閉塞で初発の場合は、顕著な症状が見られなく気付かれないこともあります。
診断
エコー検査で、腎盂が拡張している水腎症の時に尿管結石の閉塞を疑います。尿管結石の閉塞場所や、尿管の拡張度合いは手術手技に大きく影響する可能性もあるので慎重に精査します。当院では最新機種の超音波診断装置がありますのでご安心ください。
レントゲン検査でも、尿管結石の場所を確認します。
血液検査では、腎数値の上昇がないかを確認します。多くは急死腎不全に進行していることが多いので早急な対応が必要です。
エコー検査(尿管結石)
尿管に閉塞した結石が確認されます。閉塞により尿が流れず、尿管が拡張しています。
尿管の閉塞により腎盂が拡張し、水腎症となった腎臓。
腎臓にかなりの障害が加わっている状況です。
エコー検査(水腎症)
治療
基本的には手術による結石の摘出が推奨されています。
尿管の閉塞が継続すると腎臓に不可逆的な障害が残り、術後に慢性腎不全になることもあるので、早急に治療を開始する必要のある緊急疾患になります。
当院では尿管切開、SUBシステム設置(腎臓-膀胱バイパス)、尿管膀胱吻合術の手技を行えますので、状況に応じて最適な治療方法を選択します。
術後は結石の再発防止のために療法食を開始します。
非常に細かいですが縫合部位です。
拡大鏡を使用し縫合します。
尿管切開し縫合
摘出した尿管結石
尿管結石は非常に小さいですが、尿管に閉塞すると命に関わる状況になります。
SUBシステム
SUBシステムは腎臓から膀胱をつなぐデバイスです。
尿管狭窄に対しても使用することがあります。
SUBシステム
尿管を一部切除し、尿管の断端を膀胱に吻合します。
尿管が一部狭窄、破綻している場合は考慮します。
マイクロサージェリーになるので、拡大鏡を使用して手術します。
尿管膀胱吻合
会陰尿道造瘻術
尿道結石や狭窄により尿道閉塞を繰り返す場合や、遠位部尿道に腫瘍が発生し切除外必要な場合に考慮される手術手技です。
今回は尿道閉塞について会陰尿道造瘻術が必要な場合を記載します。
原因
膀胱出てすぐの骨盤内の尿道は尿道径が太いですが、尿道の先になるほど尿道径がかなり細くなります。
その部分の尿道に結石や栓子といったものが閉塞し易いために、尿道閉塞を繰り返します。
閉塞を繰り返すと尿道に炎症が起き狭窄を引き起こすこともあります。
主に猫で手術を考慮される場合が多いです。
膀胱から出てすぐの尿道径は太いので、閉塞が起きづらいです。
陰茎近くの尿道先は尿道径がかなり狭くなり、結石などで閉塞が起きやすくなります。
症状
尿道閉塞すると、何度も排尿ポーズをとるにもかかわらず尿がほとんど出ない状況になります。
適応
療法食等の治療を介入しても尿道閉塞を繰り返し、会陰尿道造瘻術を実施したほうがQOLの上昇が望める場合に考慮します。
手術手技
尿道径は先に行くほど細くなるので、尿道径の広い骨盤よりに尿道開口部を設置することにより症状を改善させます。
尿道径の広い部分に尿道開口部を設置します。
手術手技
術後
子宮蓄膿症
子宮内に膿が貯留することで全身状態の著しく悪化します。
原因
発情後の子宮が易感染状態になっている時に感染が起きることで発症します。
子宮内に膿が貯留し、進行すると敗血症に至ります。
症状
元気・食欲の低下や、下痢や嘔吐といった消化器症状が認められます。
開放型では膣から膿の排出が見られます。閉鎖型では膿の排出は見られません。
高齢で未避妊の犬・猫では注意が必要です。
進行すると敗血症になり、その後虚脱状態し死に至ります。
陰部から膿の排出
診断
血液検査では、白血球やCRPといった炎症マーカーの上昇が見られます。
エコー検査では、子宮内に液体の貯留が認められます。
子宮内に液体貯留が認められます。
エコー検査
治療
避妊手術と同じように、手術により子宮と卵巣の摘出を行います。
進行していなければ多くの子で、数日で全身状態が改善し、無事に退院できます。
ただ進行していると、手術を行っても死亡リスクが上がるので注意が必要です。
早く治療を介入すれば助かることが多い病気ですので、心配な場合は早めの受診をお勧めします。
基本的には手術が推奨されていますが、内科的に薬で治療する方法もあります。
ただ薬で改善しない場合は手術が必要になります。
帝王切開
お産の兆候がきているにもかかわらず自力で出産できない場合は、お母さんや子供が命の危険にさらされるので帝王切開の必要があります。
原因
短頭種では、母親の骨盤腔の大きさに対して胎児の頭の大きさが大きいため、自力で出産が困難なことが多いです。
帝王切開になる可能性の高い品種は、事前にレントゲン検査やエコー検査で胎児の頭数や心拍等の確認を推奨しています。
胎児の骨格が多数確認できます。
レントゲン検査
適応
出産予定日が来ているにもかかわらず、2頭目以降が2時間経っても出産しない、破水しているにもかかわらず出産しない場合などは帝王切開の適応似なります。
治療
上記のような場合は命の危険があるため帝王切開が必要になります。
手術は人と同じように開腹が必要ですが、術後から基本的には授乳が可能です。
当院では胎児への負担の少ない麻酔薬を選択し、手術時間も極力短く終わらせることで、胎児への負担を減らすように努力しています。
手術中
帝王切開で取り出した胎児