皮膚・アレルギー科

アトピー性皮膚炎
アレルギー性皮膚疾患はアトピー性皮膚炎と食物アレルギーに大別されます。
ここではアトピー性皮膚炎について説明します。
アトピー性皮膚炎は身の回りのアレルゲンに対して免疫が過剰に反応し、痒みを引き起こします。
症状
慢性的な皮膚の痒みが見られます。
初期は足先の痒みや外耳炎を繰り返し、年とともに症状の範囲が広がることが多いです。


アレルギー性皮膚疾患の好発部位

診断
基本的には除外診断により診断します。
外部寄生虫や感染症を否定し、食物アレルギーも否定されたら診断されます。
しかし、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーを併発している症例も多々いますので注意が必要です。
その他、発症年齢や病変部位からも推測します。
アレルギー検査は必須ではありませんが、実施することもあります。
治療
根本的な原因であるアレルゲンを完全に避けられれば、痒みはゼロに出来ます。
しかし現実的には、ハウスダストマイトなどに反応していることも多いので、アレルゲンを避けることは難しいです。
治療は一つの方法だけに頼らず、いくつかの方法を組み合わせていくことが重要です。
アレルゲンの回避や、内服、外用薬(プロアクティブ療法も含めて)、シャンプーなどのスキンケア、サプリメントなどを組み合わせて行っていけるよう提案します。
常に痒みがあると、犬猫はかなりのストレスを感じています。
アレルギー性皮膚疾患は、人と同じように完治は困難であり、一生付き合っていく病気なので、よく相談したうえで納得した治療を行っていきましょう。
食物アレルギー
アレルギー性皮膚疾患はアトピー性皮膚炎と食物アレルギーに大別されます。
ここでは食物アレルギーについて説明します。
食物アレルギーは、食物がアレルゲンとなり、免疫が過剰に反応し、痒みや消化器症状を引き起こします。
症状
慢性的な痒みを呈します。
また、食物アレルギーの場合には排便回数の増加、軟便などの消化器症状が見られることもあります。
診断
アトピー性皮膚炎と同じように、基本的には除外診断により診断します。
教科書的な流れだと、外部寄生虫や感染症を否定して、その後除去食試験をして診断します。
ただ、アトピー性皮膚炎と併発していることも多々ありますので注意が必要です。
その他にも、通年性の症状か、病変部位などからも推測します。
食物アレルギーでは、アレルギー検査が治療の際に役立つので検査する価値はあると思われます。
治療
アレルゲンとなる食物を避けれれば、症状が改善します。
注意しなければならないのは、低アレルギー食は決して食物アレルギーの万能食ではないので、それを与えれば治るというものではありません。
その子それぞれで反応する食物は異なるので、その子に合った食事を見つける必要があります。
その際にアレルギー検査の結果があると、食事選びをしやすくなります。
アレルギー検査は費用が少し高く、治療の上で必須ではないので、相談したうえで決めていきましょう。
アレルギー性皮膚疾患は、一生付き合っていく病気なので、よく相談して納得したうえで治療をしていければと思います。
外耳炎
外耳道に発赤や耳垢がみられ、痒みも伴います。
基本的には一過性の症状ですが、慢性化する場合もあります。
慢性化してる場合は、基礎疾患としてアレルギー性皮膚疾患が多いです。
その他にも外部寄生虫や、耳道内異物、腫瘤といった原因があります。
検査
耳道内の観察。
耳垢検査により外部寄生虫や、マラセチア、細菌を確認します。

細菌

マラセチア

ミミヒゼンダニ
治療
点耳薬、内服薬、洗浄などを行います。
基礎疾患としてアレルギー性皮膚疾患が疑われる場合は、その治療も並行して行う必要があります。
慢性化すると耳道が重度に肥厚し、治療抵抗性となり全耳道切除などの手術が必要になる例もありますので、ひどくなる前にしっかり治療をしていきましょう。
皮膚糸状菌
症状
脱毛や落屑(表皮の角質が脱落したもの)が見られます。
頭部や四肢に病変が見られることが多いです。
皮膚糸状菌は、他の動物や人にも感染するため注意が必要です。
検査
感染した被毛を顕微鏡やウッド灯で観察すると確認出来ることもあります。
培地に感染被毛を接種すると、真菌の増殖や培地の赤変を観察できます。

感染被毛の顕微鏡所見

DTM培地
顕微鏡では感染被毛の分節分生子が見えることもあります。
培地は、真菌の増殖や、培地の色が赤く変化したりします。
治療
外用療法や内服薬により治療します。
外用療法は、抗真菌薬の含まれたシャンプーや、軟膏を使用します。
内服は、抗真菌薬を内服します。
これらをその子の状況に応じて組み合わせて治療します。
皮膚糸状菌は環境中に飛散したものから、再感染する可能性もあるので、しっかりと治療を続けることが重要です。
毛包虫(ニキビダニ)
毛包虫(ニキビダニ)は毛包内に常在している寄生虫です。
しかし、免疫機能の低下などにより過剰に増殖すると皮膚症状を引き起こします。
症状
脱毛や発疹が見られます。
若齢の動物や基礎疾患のある高齢の動物で発生が多いです。
検査
病変部位の被毛検査や搔把検査(スクレーピング)により、毛包虫を顕微鏡で確認します。

毛包虫
治療
主に駆虫薬で治療します。
二次感染が起きている場合には、合わせて治療します。
若齢での発生は治療により改善しますが、高齢の場合には、基礎疾患による免疫機能の低下が原因となっているので再発することが多いです。
皮膚検査のみならず、基礎疾患を治療していくことが重要となります。
疥癬
症状
疥癬の症状として特徴的なのは、皮膚疾患の中でもかなり強い掻痒をもたらします。
他の動物や、人にも一時的感染するので注意が必要です。
検査
病変部位を搔把検査(スクレーピング)を実施し、顕微鏡で寄生虫を確認します。

疥癬
治療
主に駆虫薬で治療します。
同居の子に感染している場合は合わせて治療することが重要です。
心因性脱毛症
環境の変化などのストレスがきっかけで発症を誘発します。
症状
過度のグルーミングにより脱毛が生じます。
慢性化すると、皮膚に発赤や潰瘍が生じます。

心因性脱毛症は見た目だけでは他疾患との区別が困難です。
心因性脱毛症の猫
診断
基本的には他疾患の除外診断となります。
アレルギー性皮膚疾患や外部寄生虫などを除外し、精神的要因の関与がある場合は疑われます。
家族の行動パターンの変化や、新しいペットを迎え入れたなどのきっかけがある場合は、発症の要因となっている可能性があります。
治療
ストレスの原因の除去が一番の治療になります。
原因の修正が困難な場合や、原因が不明な場合は、内服薬が考慮されます。
脱毛症X(アロペシアX)
症状
左右対称性の脱毛が見られます。

発赤や発疹の伴わない、左右対称の広範な脱毛が見られます。ポメラニアンでの発症が多いです。
アロペシアXの犬
診断
クッシング症候群や甲状腺機能低下症などの、他の内分泌疾患の除外により診断します。
主にポメラニアンでの発症が多いです。
治療
治療は内服薬や外用療法があります。
脱毛症Xは、基本的には内服により発毛させることが可能です。
しかし治療効果の高い内服薬は、副作用が問題になる可能性があります。
一般的には副作用の少ない内服薬で治療されることが多いです。
飼い主さまの要望を伺いつつ、その子に合った治療を提案できればと思います。